賃貸として入居しているマンションやアパートなど物件でタバコを吸ってヤニ汚れやにおい・焦げ跡をつけてしまった場合、
「退去時に大家・管理会社から清掃費用や壁紙張り替え費用等は請求されるの?」
「退去費用の相場はいくら?」
といったお悩みを持っている方は多くいます。喫煙時のヤニ汚れや焦げ跡はマンション・アパートやテナント・オフィスを借りている時・退去立ち合い時に多く発生するトラブルのひとつです。ここでは賃貸物件にヤニ汚れや焦げ跡をつけてしまった時の責任や対処法などについてご説明します。
タバコを喫煙しヤニ汚れやにおい・焦げ跡をつけた場合、法的には借主に「原状回復義務」があります。原状回復義務とは「借りたものを元に戻す義務」を意味します。賃貸物件は借主の所有物ではなく、あくまで他人(=家主)から借りているモノです。他人のものを汚したり壊したした場合は元に戻す義務があるということです。つまり、「借りたものはちゃんと元に戻しましょう」というのが原状回復義務です。なお、後で詳しく説明しますが「元に戻す」とは「入居した時の状態に戻す」ということではありません。厳密には「修繕対象物の価値減少分について、借主の責任の範囲で修繕する義務」というものです。
喫煙によるヤニ汚れやにおい・焦げ跡についての原状回復義務とは「ヤニ汚れや焦げ跡などをきれいにする義務」ということになります。軽度なものであればルームクリーニングで解決できますが、状態がひどい場合は壁紙の全面張替えなどが必要となります。そうなると退去時の費用負担が大きくなりがちであり、退去時にもめる要因として主要なものとなります。
原状回復義務について、社会のルールである民法では次のように規定しています。
民法621条:賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
つまり、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗(通常損耗)」と「時間経過による劣化(経年劣化)」の場合は借主側が原状回復義務を負わないとされています。通常損耗と経年劣化の意味は以下の通りです。
通常損耗とは物件を普通に使用して通常発生する損耗を意味します。普段の生活を営む以上、家具・家電を置いてカーペットが凹んだり小さい傷がついてしまうこともあります。完全に損耗させずに生活することなんてできませんよね。民法ではこういった通常損耗については借主の原状回復義務に含まないと規定しています。
経年劣化とは時間が経過することによって発生する自然な劣化・損耗を意味します。例えば日光によってクロスが変色したり、フローリングが劣化する場合です。経年劣化は借主の責任ではないので原状回復義務に含まれません。
タバコのヤニ汚れやにおい・焦げ跡は借主の行為によるものなので経年劣化はあまり借主責任の有無判断にはなりません。しかし、借主責任の範囲・修理金額の負担割合に影響することですので経年劣化についても理解するようにしましょう。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは国(国土交通省)が定めた建物賃貸に関する原状回復のガイドラインです。民法規定・判例を基に原状回復について様々なケースを想定し通常損耗や経年劣化に該当するのか、どの修繕が借主負担なのかなど詳しく記載されています。ただし、民法規定やこのガイドラインはあくまで任意規定であり、強制力はありません。借主責任で原状回復義務があるかどうかは、まずは賃貸契約書の内容で判断します。賃貸契約書に責任が明記されていない場合はこのガイドラインに沿って借主責任があるのかないのか判断することになります。
原状回復義務について理解したところで、喫煙による損耗について借主に修理費用は請求される可能性があるかどうかを説明します。
喫煙によるヤニで室内・壁紙クロスが汚れてしまった場合やたばこのにおいが付着した場合は借主に原状回復義務があると考えられます。ガイドラインにおいても、
喫煙等によりクロス等がヤニで変色したり臭いが付着している場合は、通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多いと考えられる。なお、賃貸物件での喫煙等が禁じられている場合は、用法違反にあたるものと考えられる。
と記載されています。つまり、喫煙によるヤニ汚れは通常使用を超えると判断されるため、通常損耗を主張することで原状回復義務から逃れることは難しいということです。原状回復義務がある以上、ヤニ汚れやタバコのにおいが付着した場合は退去時にルームクリーニング費用や壁紙張替え費用を請求される可能性があります。また、賃貸借契約上で喫煙不可と条件が付けられていた場合は費用請求の可能性が高くなるでしょう。
たばこの灰をうっかり床などに落とし、フローリングやクッションフロアなどに焦げ跡をつけてしまった場合は、借主の過失・善管注意義務を怠った行為と判断されやすく補修責任を負わなければならないケースが多いです。焦げが小規模であれば部分補修で済むケースもありますが、焦げ跡が深く広範囲となった場合は全部交換となる場合があります。
喫煙によるヤニ汚れやにおいを除去させる清掃費用や壁紙・床材の貼り替え費用はいくらくらいなのか気になりますよね。修理料金の一般的な相場は以下に説明しますが、部屋の大きさや補修方法、施工業者の利益変動などによって大幅に変わることもありますのであくまでも参考程度としてください。特に賃貸管理会社から提示される見積額は一般的な相場よりも高額となるケースもあるため、一般的な相場価格よりも高くなると思っておいた方が無難です。
たばこを室内で喫煙している場合、ヤニ汚れやにおいは広範囲に及ぶことがあります。軽度な汚れ・臭いならば壁紙・クロスなどの交換はせずにルームクリーニング・消臭作業で原状回復させることが一般的です。その場合の清掃費用の一般的な相場は以下の通りです。
ヤニ汚れがひどく壁紙・クロスが変色してしまい清掃で対応できない場合は壁紙を全部張替えすることになります。この場合の一般的な料金相場は張り替えるクロスのグレードによりますが、㎡あたり約750~2,000円程度です。部屋の大きさが広いほど料金が高くなります。
たばこの灰を落としフローリングやクッションフロア(ビニールカーペット)などに焦げ跡をつけてしまった場合は、通常は焦げ跡を部分補修します。その場合の一般的な費用相場は15,000~50,000円程度となります。焦げ跡の範囲や深さによって補修費用が変動します。
喫煙によってヤニ汚れやにおい・焦げ跡をつけてしまった場合、退去立ち合い時に管理会社や家主に対する対処法について説明します。
そもそもヤニ汚れや焦げ跡が入居前からあるものかを確認しましょう。当然ですが、入居前からあるヤニ汚れや焦げ跡などは借主に責任はありません。入居前からあるヤニ汚れや焦げ跡について退去立ち合い時に指摘された場合はキチンとその旨を伝えましょう。そういった時の証拠のために、入居開始時には物件を詳しくチェックした上で写真を撮っておくことが大切です。
ヤニ汚れやタバコの臭いは清掃によってある程度解決できます。退去時の管理会社・家主の立ち合いの前に自分でできるだけキレイに清掃しましょう。家具・家電の裏側までしっかり清掃したほうがよいです。掃除の効率を上げるため、荷物を全て搬出した後にクリーニングすることがおすすめです。大家さんや管理会社としても、借主で清掃している場合は別途ルームクリーニング費用や補修費用などの退去費用を請求しない場合も多いです。
喫煙によるヤニ汚れや焦げ跡は借主の責任になります。「たばこくらい誰でも吸うだろう!」と主張したところで、責任から逃れることは難しいでしょう。退去立ち合い時に指摘された場合は、素直に非を認めて謝罪するのも一つの対処法です。家主・管理会社の担当者も人であり誠心誠意謝れば許してもらえるケースもあります。実際、管理会社・家主側としても内心は揉め事を避けたいと思っています。多少の損害であれば見逃してもらえる可能性があります。
喫煙による清掃費用や補修費用を請求された場合の対処法をご説明します。
大家さんや管理会社から請求された修理金額が高額で相場よりも明らかに高い場合は、何故そのような見積額になるか詳しく聞きましょう。その上で他のリフォーム会社や修繕業者等に同じ内容で見積もりを取り、エビデンスを持って補修費用が高額であることを主張することも対処法のひとつです。
原状回復義務で勘違いしてはならないのは「元に戻す」とは「借りた当時の状態に戻すことではない」ということです。上述の通り、建物には通常損耗と経年劣化という概念があり、居住・使用したり時間経過により価値が減少します。原状回復義務は建物(修繕対象物)価値の減少分について負うことになります。国交省ガイドラインでは原状回復は価値減少分について、善管注意義務を怠ったり通常使用の範囲を超えるような使用による損耗を借主責任の範囲としています。
原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
原状回復義務の有無・負担割合は以下の図を見たら理解しやすいです。
つまり修繕対象物を修理・交換する費用全て借主が弁償する必要は無く、「価値減少分の範囲内かつ借主責任による損耗部分」を保証すればいいということです。通常損耗・経年劣化の価値減少分は毎月支払っている家賃に含まれていると解されているからです。ただし、借主の管理状態が悪いことにより通常損耗原因が発生したり損耗が拡大した場合は原状回復義務が発生する場合があります。借主責任による損耗とは主に以下のようなケースです。
退去時の残存価値は耐用年数で新品価格を減価償却すればわかります。壁紙クロスの耐用年数は一般的に6年ですので、入居時に新品でも6年以上住んでいれば残存価値は1円になります。壁紙のみの補修の場合、6年以上住んだ場合は補償上限額は1円なのでほとんど請求されることはないでしょう。それでもなお、新品価格で修繕した総額を請求されている場合は上記の内容で負担金額が過大であることを主張すると良いでしょう。
壁に穴を開けてしまい管理会社や大家さんから修理費用を請求されたとして、支払いを拒否したり請求を無視したらどうなるのでしょうか?ここでは入居時に敷金・保証金を払っている場合と払っていない場合に分けてご説明します。
入居時に敷金(=保証金)を支払っている場合は敷金・保証金から修繕費用を差し引かれるため強制的に一旦は修繕費用を支払うことになります(敷金充当)。また、西日本の賃貸契約に多い「敷引き特約」が結ばれている場合は通常は「損害の有無にかかわらず一定の金額」が敷金から差し引かれることになります。この場合、敷引き額が修繕額(=貸主から見たら損害額)を下回る場合、追加で費用を請求される場合があります。ただし、明らかに高額な補修費用を差し引かれたり、負担割合を上回る退去費用を差し引かれた場合は返金を求めるのも良いでしょう。
敷金・保証金無しの条件で賃貸契約を結んでいる場合、家主や管理会社から修繕費用を請求されることになります。大家さんや管理会社から請求されているのに払わなければ、保証会社や連帯保証人に請求される場合があります。保証会社や連帯保証人が支払った場合、支払人から弁済を求められることになるでしょう。賃貸契約時に保証会社を利用せず連帯保証人がいない場合、支払わない場合は家主から訴訟を起こされるかもしれません。しかし、裁判にはお金と時間がかかることから手間をかけてまで費用請求をしてくるかは微妙なところでしょう。
タバコによる退去費用の相場や対処法等について、大事なポイントをまとめます。
これらのポイントを理解した上で、壁の穴の補修責任が自分にあるのか、負担割合はどれくらいか、請求額が高額ではないかをチェックしながら対応することが大切です。退去時に大家さんや管理会社が言うままに対応してしまうと、本来支払わなくても良いお金を払うことになったり相場より高い金額を支払うことになるかもしれません。賢く対応することでお得な賃貸生活を楽しみましょう。
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